「動物福祉」に関する提言

皆さんは動物福祉(アニマル・ウエルフェアー)という言葉を聞かれたことがありますか。勿論、犬や猫等のペットに対する虐待もその中に入りますが、人間の食用に飼育される畜産業におけるアニマル・ウエルフェアー(動物を人間的に扱う)が今、欧米ではESG指標になりつつあります。即ち、効率的な畜産を目的に、鶏をケージに取り込めたり、養豚のための妊娠豚用ストールを禁止することなどが投資家の投資判断指標として取り入れられているのです。

動物福祉は人が動物を利用する上で動物の幸せ・人道的な扱いを「科学的」に実現するもので、動物本来の生態・欲求・行動を尊重する考え方です。次の「5つの自由」が1965年に提唱され各国で採用されています。①飢餓と渇きからの自由②苦痛、傷害、または疾病からの自由③恐怖及び苦悩からの自由④不快さからの自由⑤正常な行動が出来る自由 です。

プラチナ・ギルドの会の有志は、2018年6月、オーストラリア・ブリスベンの近くでPG会員のAさんが3,000頭の和牛牧場を見学してきました。広大な牧場管理を8名のスタッフで管理している効率性にも驚きましたが、自由に牧草を食べ、遊びまわる和牛を見て、バ-べキューで頂いたストレス・フリーの牛肉は格別であったことを思い出します。また、ロンドンでは娘が少し高価ながら、フリーレンジで飼育された卵を購入していると聞いたことがあります。

畜産動物に関する法規制は日本にはありませんが、国別調査では欧米、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ブラジル、アルゼンチンなどでは個別にガイドラインや禁止措置が取られています。これは消費者の意識の高さや、SDGsに対する認識の問題があると考えられます。
我が国は残念ながら米国同様、動物福祉に対する国民の認識が低く、企業も重要性の認識はありますが未だ行動にまでは至っていません。英国では60年代から徐々に家畜やペット等人間がかかわりを持つ動物に、死に至るまで出来る限り苦痛やストレスを掛けない「動物福祉」の考え方が定着してきました。即ち、「5つの自由」原則が政府により提唱され、以来「福祉」には動物の権利も包括するものと考えられています。

例えば、スーパーのマークス&スペンサーの食品事業では早くから「責任ある調達」を徹底し、ケーキやデリ製品に使う卵は15年前からフリーレンジだけに限っています。また、最大手のドラッグストアであるブーツ社は自社ブランド・コスメの開発プロセスには動物実験を使わない、店で販売するサンドイッチに使われる卵は2017年からすべてフリーレンジに変えたと、「企業の社会的責任」を宣言しています。日本と同様に「動物福祉」に課題を有する米国は動物保護団体ワールド・アニマル・プロテクションから2014年調査でランクD(日本も同じ)と、改善余地の多い国と指摘されています。しかし、マクドナルドは2015年に10年以内に平飼い飼育の卵に切り替えると宣言しています。これは消費者意識の変化に企業が積極的に対応してきていることを示しています。「クルーエルティ・フリー」、「ケージ・フリー」等の言葉が「オーガニック」、「フェアー・トレード」と同様、又はそれ以上に意識され始めていることを示しています。

今年は目前に東京オリ・パラ開催を控えています。。世界中からアニマル・ウエルフェアーの意識の高い消費者が日本を訪れます。オリンピック選手村の食堂で「動物福祉」に配慮した食品を提供できるかが問われています。ロンドンや、リオ・オリンピックでの選手村や会場で提供される卵はケージ・フリーでなくてはなりませんでした。今年の東京オリ・パラで「動物福祉」に配慮した食の提供が出来るか、負のレガシーを残すことになるかが問われています。また、日本企業が遅れを取り戻すためには「動物福祉」を「意識している」から具体的に期限を明記した上で「何年までにこのように行動し・実現する」と宣言し、チャレンジすることがリスクをチャンスに変える機会になるのです。