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「企業版ふるさと納税」とSDGs(国連持続的発展計画(2030)

「企業版ふるさと納税」とSDGs(国連持続的発展計画2030)

プラチナ・ギルドの会ではシニア世代がこれまで社会で培ったスキルや経験を活用し、少しでも社会に恩返しする社会貢献活動を提唱し、会員はそれぞれの得意分野で活動しています。同時に、現在素晴らしい社会貢献活動をされておられるシニアの方々を毎年公募により5-6名選考し、二月には同世代や、次世代のロール・モデルとして顕彰してまいりました。また、毎月開催されてきた例会の中でSDGs(国連持続的発展計画2030)を学び、我々としても「自分事として行動する」ことを検討してきました。

今般の「企業版ふるさと納税」にかかる税制改革を契機に「企業×自治体」の事業モデルにより「地方再生」プロジェクトに弾みを掛けたいと考え、現役時代に培った、スキル・知恵・経験を有する会員有志によるグループが組成されました。3月24日には関係者(プラチナ・ギルドの会の有志と、企業版ふるさと納税のプラットフォームを構築中のカルティブ社、及びJTB)が集まり、具体的な推進手法について検討するためキック・オフ・ミーティングを開催しました。

私たちの思いの深さは1980年代の英国に遡ります。労働党政権下で財政破綻を生じた英国経済を再生するため、サッチャー政権は強力な大衆窮乏化策を推進する中、1984年にはロンドン市内で度重なる暴動が多発し、CBI(英国経団連)傘下の企業は、ビジネス・イン・ザ・コミュニティー(企業は学校や病院と同様、社会の重要な構成員)の認識を深め、現在まで脈々とその考え方や活動が続いています。EU各国は歴史的にも国民や企業の環境問題等に対する意識は高く、ESG投資については圧倒的に欧州が先行しています。

ところで、本年初に中国(武漢市)で発生した新型コロナ・ウイルスは中国はもとより、今では感染拡大が欧州、米国、中近東、東南アジア、アフリカと世界中に飛び火しています。日本でも首都圏はこのところ病院崩壊を招くと言われる、オーバーシュートのリスクが高まっています。まさに世界中で市民はこれまでに経験したことのない不安と恐れを抱え、これからの社会や企業の持続可能性が問われています。勿論、各国政府、研究機関、医薬会社は全力で、新型コロナ・ウイルスの検査キッドや、特効薬(抗生薬)の開発に躍起になっています。

我が国はこれまで欧米諸国に比しSDGsに対する国民の意識レベルが弱く、消費や投資行動で企業を動かすまでに至っていません。パリ協定(CO2削減目標)やEDG投資、SDGsの取り組み等の企業の社会的責任(CSR)の意識は先進国比し遅れていると言わざるを得ません。ところが国民の意識改革や昨今の世界的な新型コロナ・ウイルスの蔓延危機により、持続可能な社会や企業へと行動変革が求められています。例えば、SDGsに対する若者・中堅社員の意識は高く、SDGsの取り組みに感度が鈍い企業は有能な社員を失うことになるでしょう。

今般「企業版ふるさと納税」の新税制改革が施行され、内閣府が対象事業として承認すれば、その自治体事業に対する企業寄付は大幅に税制優遇されることになります(現在の見込みでは新税制は5年間の制度延長に合わせ、大幅な税優遇が4月1日に遡って認められます)。自治体がそれぞれの地域再生計画を立案・推進し、社会との関係を深めたいと考える企業から寄付を集めることが出来れば日本企業の地域社会との関係に大きな変化をもたらす起爆材になるかもしれません。私たちは各地の地方自治体が本格的に再生するためには前回の「私たちからの提言」藤波匠・日本総合研究所上席主任研究員の提言にあるように、自治体自身が官・民・学の連携により、高い労働生産性の事業を創造し、雇用の機会を創造することが必要であると考えます。

そのためには

  • 各地域の農・林・水産業の近代化(センサーとなるドローン、万能自動ロボットにAIを登載したスマート農業)と村や町自体のDX革命(デジタル・トランスフォーメーション)
  • 日本の美しい自然や独自の文化・風土を活かした観光産業
  • 若者の農・林・水産業の社会起業家育成事業
  • 介護や医療分野へのロボット導入による生産性向上
  • 5Gや無人運転技術を活用したスマート・シティーの実証実験
  • 健康で元気なシニアのための一次産業就業型高齢者ハウス

等など、革新的で企業寄付者の共感を得るようなプロジェクトを推進することが重要です。

私たちはこれまでの地域との繋がりや、これまでの経験や知恵を少しでも生かし、単なる都会から地方への補助金による人口移動ではなく、次世代の産業やビジネス・モデルが地方に生まれるように「自治体×企業」プロジェクトを支援したいと考えます。

「本格的な働き手の減少に備えて」

今回はこの度プラチナ・ギルドの会の趣旨に賛同し入会された、株式会社 日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 藤波 匠さんに特別寄稿頂きました。著書に「人口減が日本を強くする」、「”北の国から”で読む日本社会」

昨今、どの企業経営者にとっても、人材確保は頭が痛いところです。人手不足と言われて久しい状況にありますが、特に地方で深刻な状況にあるようです。

しかし、足もとまでの人手不足は、好景気によるところが大きく、人口や労働力が減ったことが主因ではありません。実は、働き手の減少はこれからが本番であり、人手不足は一層深刻化することが見込まれます。

2019年に二十歳となった新成人は122万人でした。少子化がすっかり定着し、人手不足が喧伝されたことから、新成人の数は毎年大幅に減っていると考える人も多いことでしょう。調べてみると、意外なことにこの10年間、新成人の数は120万人台で推移し、ほとんど減っていないのです。

その理由は、この10年間に新成人となった世代が生まれた1990年代が、ちょうど団塊ジュニアの出産適齢期に当たったためです。団塊ジュニアは、団塊の世代の子どもの世代にあたり、人口規模がその前後の世代に比べて明らかに多くなっています。彼らは、就職氷河期の走りで、晩婚化の流れもあり、ベビーブームを形成するには至りませんでしたが、急速に進んでいた少子化の流れを一時的に押しとどめる役割を果たしたと考えられます。

すなわち、過去10年に限れば、若い労働力は毎年一定数社会に出ていたのです。しかも、近年は高齢者や女性の労働参加が増え、また外国人労働者の流入もあり、労働力人口が大きく減ったことはなく、ここ数年に限れば逆に増加傾向にあります。

特に女性の労働参加は顕著で、すでにわが国は、アメリカやフランスの労働参加率を上回る水準にあります。以前は、出産と育児のために女性が仕事から離れることにより生じていた女性の年齢別労働参加率のM字カーブが、ほぼ消滅しています。

ここまで人手不足が声高に叫ばれてきましたが、これは好景気によるところが大きく、わが国の人口構成という構造的な問題の影響はまだ限定的であったことになります。近年、地方から若い人の流出傾向が強まっていますが、これは好景気を背景に、東京などの大都市の大手や外資系の企業が好条件で人材確保に走った影響もあったでしょう。

しかし、追加的な労働供給が期待できるのも、今年限りかもしれません。働き手の数はピークアウトし、いよいよ減少局面に突入するからです。女性や高齢者の追加的な労働供給余地は限られています。また、過去10年ほぼ横ばいで推移していた新成人も、いよいよ来年以降は再び減少局面に入ります。2000年に119万人あった出生数は、2016年には100万人を割り込み、2019年には86万人となりました。それは、ほぼそのまま20年後の新成人数となります。残る希望は、外国人労働者ですが、現在の入国者数の規模では、労働力人口の減少を補うことは到底できません。

これまで人が採れなかった業界や若い世代の流出が止められなかった地域は、今後一層深刻な状況に直面することになるでしょう。地方はより深刻です。すでに大企業は、若い世代が減少しても、優秀な人材を確保できるように、雇用条件の改善や働き方改革に力を入れています。中小企業が多く、そうした余力のない地方では、深刻な人手不足に直面することになると考えられます。政府の地方創生戦略は、地方に雇用を創出することを目指しましたが、いま求められているのは、雇用の数ではなく質の高い雇用ということになります。

東京、地方を問わず、また大企業、中小企業を問わず、これからわが国が考えていかなければならないのは、より少ない人材の投入で、より多くの富を生み出すことです。イノベーションの成果をしっかりと取り込み、効率的な社会を作っていかなければなりません。

典型的な例が、介護産業です。介護は労働集約的な産業で、人手不足の最前線といえるでしょう。介護現場の疲弊と余裕の無さが、介護担当者から、最も大切な“笑顔”を失わせているのではないでしょうか。

こうした産業でこそ、イノベーションの導入は不可欠です。筑波大学の落合陽一准教授の弁によれば、介護士の労働時間の15%は車椅子を押している時間ということです。例えば、介護対象者をベッドから起こし、車いすに乗せ、検査室までの移動を無人で行うことができれば、介護士の負担を大きく減じることができるはずです。

今後、長期間にわたり働き手が大きく減ることが確実なわが国では、企業の立地、業種を問わず、待遇の改善を図り、働き手が笑顔で働ける環境を整備していかなければなりません。そのためにイノベーションをおこし、将来を見据えて生産性向上を図る設備投資をする組織・企業が求められているのです。

今後、当会では「企業版ふるさと納税」を活かした「地方創生」や地域包括ケアシステム構築に向けた「保険外サービス」=有償ボランティアの仕組みなどについても提言し・取り組んでまいります

「動物福祉」に関する提言

皆さんは動物福祉(アニマル・ウエルフェアー)という言葉を聞かれたことがありますか。勿論、犬や猫等のペットに対する虐待もその中に入りますが、人間の食用に飼育される畜産業におけるアニマル・ウエルフェアー(動物を人間的に扱う)が今、欧米ではESG指標になりつつあります。即ち、効率的な畜産を目的に、鶏をケージに取り込めたり、養豚のための妊娠豚用ストールを禁止することなどが投資家の投資判断指標として取り入れられているのです。

動物福祉は人が動物を利用する上で動物の幸せ・人道的な扱いを「科学的」に実現するもので、動物本来の生態・欲求・行動を尊重する考え方です。次の「5つの自由」が1965年に提唱され各国で採用されています。①飢餓と渇きからの自由②苦痛、傷害、または疾病からの自由③恐怖及び苦悩からの自由④不快さからの自由⑤正常な行動が出来る自由 です。

プラチナ・ギルドの会の有志は、2018年6月、オーストラリア・ブリスベンの近くでPG会員のAさんが3,000頭の和牛牧場を見学してきました。広大な牧場管理を8名のスタッフで管理している効率性にも驚きましたが、自由に牧草を食べ、遊びまわる和牛を見て、バ-べキューで頂いたストレス・フリーの牛肉は格別であったことを思い出します。また、ロンドンでは娘が少し高価ながら、フリーレンジで飼育された卵を購入していると聞いたことがあります。

畜産動物に関する法規制は日本にはありませんが、国別調査では欧米、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ブラジル、アルゼンチンなどでは個別にガイドラインや禁止措置が取られています。これは消費者の意識の高さや、SDGsに対する認識の問題があると考えられます。
我が国は残念ながら米国同様、動物福祉に対する国民の認識が低く、企業も重要性の認識はありますが未だ行動にまでは至っていません。英国では60年代から徐々に家畜やペット等人間がかかわりを持つ動物に、死に至るまで出来る限り苦痛やストレスを掛けない「動物福祉」の考え方が定着してきました。即ち、「5つの自由」原則が政府により提唱され、以来「福祉」には動物の権利も包括するものと考えられています。

例えば、スーパーのマークス&スペンサーの食品事業では早くから「責任ある調達」を徹底し、ケーキやデリ製品に使う卵は15年前からフリーレンジだけに限っています。また、最大手のドラッグストアであるブーツ社は自社ブランド・コスメの開発プロセスには動物実験を使わない、店で販売するサンドイッチに使われる卵は2017年からすべてフリーレンジに変えたと、「企業の社会的責任」を宣言しています。日本と同様に「動物福祉」に課題を有する米国は動物保護団体ワールド・アニマル・プロテクションから2014年調査でランクD(日本も同じ)と、改善余地の多い国と指摘されています。しかし、マクドナルドは2015年に10年以内に平飼い飼育の卵に切り替えると宣言しています。これは消費者意識の変化に企業が積極的に対応してきていることを示しています。「クルーエルティ・フリー」、「ケージ・フリー」等の言葉が「オーガニック」、「フェアー・トレード」と同様、又はそれ以上に意識され始めていることを示しています。

今年は目前に東京オリ・パラ開催を控えています。。世界中からアニマル・ウエルフェアーの意識の高い消費者が日本を訪れます。オリンピック選手村の食堂で「動物福祉」に配慮した食品を提供できるかが問われています。ロンドンや、リオ・オリンピックでの選手村や会場で提供される卵はケージ・フリーでなくてはなりませんでした。今年の東京オリ・パラで「動物福祉」に配慮した食の提供が出来るか、負のレガシーを残すことになるかが問われています。また、日本企業が遅れを取り戻すためには「動物福祉」を「意識している」から具体的に期限を明記した上で「何年までにこのように行動し・実現する」と宣言し、チャレンジすることがリスクをチャンスに変える機会になるのです。